書籍情報
書籍名:いくつもの壁にぶつかりながら
著者:村田早耶香
出版社:PHP研究所
レーベル:ー
発売日:2009年06月13日
購入日:ー
読了日:2012年08月04日
レビュー日:2012年08月04日
目次
わたしが出会った、あるカンボジア人少女の物語
プロローグ
第1章 カンボジアの児童買春問題
「都会によい仕事がある」と騙されて
タイへのスタディツアーで見たもの
エイズ孤児の五歳の女の子
親にレイプされた子ども
ゴミ山で懸命に生きる人々
孤児院の子どもたちの哀しい過去
電気ショックを与えられながら…
この悲劇をなくしたい
かものはしプロジェクトの取り組み
第2章 かものはしプロジェクトのスタート
”アジア人として育った”子ども時代
開発援助に興味を持った高校時代
フェリス女学院での運命の出会い
ただ生まれた国が違うだけ
児童買春問題についてもっと知りたい!
世界会議に向けての「授業ジャック」
世界会議に出席して
ボランティアをして見えたこと
人生を変えた仲間たち
「かものはしプロジェクト」の誕生
第3章 児童買春をなくすための事業モデル
児童買春の現状を把握しよう
自立収益型の事業モデル
良い仲間に恵まれて…
どうしてもやるなら家を出て行け
完敗!「学生起業家選手権」
「そうだ、現地を見てみよう」
カンボジアで決意を新たに
絶対にカンボジアを支援したい
広がる支援
IT素人がウェブ制作の仕様書を作る?
IT事業部、大ピンチ!
雨降って地固まる
第4章 パソコン教室でカンボジアに進出
カンボジアで踏み出した、夢への第一歩
施設から逃げ出した子どもたち
ストレスだらけの駐在生活
事業プランを否定されて…
パソコン教室、ついにスタート!
才能を開花させた男の子
支援者の輪を広げるサポーター事業
任意団体からNPO法人へ
二〇〇五年の私の生活
第5章 農村の子どもたちを救え
農村支援への方向転換
提携で見えた、現地NGOの現状
コミュニティファクトリー始動!
いぐさ織り研修のスタート
「ビジネス」に対する考え方の違い
販路獲得と生産の落とし穴
えっ、賄賂?
ムチャな指令
新ファクトリーの落成
初めて聞えた!村人たちの肉声
日本での販売へ
第6章 あたたかな支援に包まれて
伝える技術の猛特訓
渾身の力を込めて伝えた想い
世界中から送られた拍手
これからの挑戦
エピローグ
謝辞
かものはしプロジェクト活動年表
参考文献
かものはしプロジェクト事業概要
感想・備忘
2012年当時に記載したレビューを転記します。
売春宿に売り飛ばされ、電気ショックを与えられながら働かされている少女たち。彼女らは家が貧しかったため、売春宿に売り飛ばされていたのです。HIVがもとで死亡したり、自殺したりする子も少なくないことを知ったとき、彼女達のために何かをしなければと心に決めました。[裏帯]
「ふつうの女子大生」がはじめた社会起業。
私たちが世界の「児童買春」をなくしていきます。
かものはしプロジェクト共同代表の一人である、村田さんの著書。
かものはしプロジェクトを立ち上げるまでの自身の半生と、プロジェクト立ち上げ以降の話になります。
「ふつうの女子大生」、どちらかというと大人しい…と自分のことを本書内で述べていた村田さんですが、「子ども・若者プログラム」(「世界各国の25歳以下の若者が「児童の商業的性的搾取」に関する意見をディスカッションしてまとめ、発表するというもの」(p70))に参加することが決まった際、
代表に決まった八月末から、世界会議の十二月までに自分のできることは何だろうと必死に考えました。
そのときにまず考えたのは、若者の意見をできるだけ多く集めるために、大学で話を聞いてもらおうということです。自分は大学生だし、そこには多くの若者がいるんだから、活用しないのはもったいない。
(p72)
として、各講義の先生に頼んで時間をもらい、生徒の前で何回も話をされています。
正直、この行動力はどうみても「大人しい」人じゃなかろう…と思うのですが、確かに本書を読んでいて見えてくる彼女の人柄は、「大人しい」「温和」な方のようです。
そんな彼女を、時にはここまでアグレッシブに突き動かすのが、「児童買春」の廃絶、カンボジアの人々への支援という志なのでしょう。
最初のカンボジア視察の帰りの飛行機の中で考えたことを、彼女は次のように述懐しています。
「人生を懸けていいのか。普通の会社に就職してお給料をもらって…という生活を遠ざけていいのか」とこれまで迷っていたけれど、こんなに大切に思ってくれているのだから、リスクを負ってでもやっていく意味は絶対ある。
私は帰りの飛行機の中でそう決意しました。
カンボジアで出会った子どもたちは、ぼろぼろの古い服を着ている子もいましたが、とにかく目がとても綺麗でした。日本では、いい服を着ていないと恥ずかしいという気持ちがあったのですが、貧しくてもあんなに綺麗な目をして輝いている人がいる。それを見たとき、「幸せの定義」が自分の中で変わったのだと思います。
(略)
日本の外から日本人を見つめることで、これまでの既成概念から離れ、自由に考えることができました。その中で、目の前にいる子どもを守り、未来を良い方向に向かわせることが、とてもとても重要なことであるように思いました。
(p112-113)
マザーハウスを設立した山口絵理子さんをはじめ、「81世代」といわれるこの年代生まれの方々は、こうした社会起業で活躍されている方が多いです。
山口さんの自伝も読みましたが、お二人とも共通して、たくさん悩み、迷いながらも、でもやはり捨てることが出来ない、自分が自分であるための「軸」のようなものをしっかりとお持ちになっているなーと感じ、私には輝いて見えるのでした。
ここからは2024年の感想です。
上述のレビューのカンボジアで出会った子どもたちの目がきれい、という話で思い出したものがあります。
それは私が小学校の頃、ちょうど夏休み明けの全校集会だったような気がしますが、校長先生の話でネパールの子どもの話が出たことがありました。
先生も、ネパールの子どもたちの目はとてもきれいだった、というのです。
過酷な環境、日本からするとある意味上から目線で、「貧しい環境」に身を置いている彼らは、それでも目がきれいだったと。
この先生の話を覚えていたのは、この目がきれいという話の前に「ネパールやインドの空気は君たちには想像できないと思う。とてもにおう」と言っていたからです。小学生なのでそういうなんだかネガティブなポイントのほうを面白おかしく茶化してしまいがちだったので、「くさいのか」という話題でその日同級生と話していた記憶があります。
今だとちょっとあれな保護者とかがいるとクレーム入りそうな感想ですが、全体を通して聞いてよかった話だと思っています。
まじめな話、「におい」を含めた空気というのは電話やメール、映像では現状伝わってこない情報なので、こういったエッセイで言及されていってほしいな、と思いました。
きれいごとの向こう側にある情報を知ると、やっぱりそこで活動されている方には頭が下がるのです。
印象に残ったところ
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