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【読書記録】とてつもない日本

豊かな時代には、「自己実現」を達成したくて頑張る者は、思う存分やればよい。しかし、すべての人に創意工夫を求めて「自己実現」を要求するのは、間違っているのではないかとも思うのである。
─ 45ページ

書籍情報

書籍名:とてつもない日本
著者:麻生太郎
出版社:新潮社
レーベル:新潮新書
発売日:2007年06月10日

購入日:ー
読了日:2012年08年27日
レビュー日:2012年08年27日

 

目次

はじめに
第一章 アジアの実践的先駆者
日本は必ずよくなる
成功も失敗も進んでさらけ出す国
安定化装置としての役割
アジアの幸福
第二章 ニートも、捨てたもんじゃない
若者のソフトパワー
日本がロボット大国である理由
私は劣等生だった
第三章 高齢化を讃える
若さは至上か
還暦過ぎたジョン・レノン
老人の労働力
第四章 「格差感」に騙されてないか
平等が生み出す不平等
なんとなく気が晴れないだけ?
教育は格差より悪平等の問題
第五章 地方は生き返る
炭鉱からベンチャーへ
三位一体改革で親離れ
役人の時代の終焉
地方の底力の集合体が日本
第六章 外交の見取り図
外交は難しいか
中国の台頭を喜ぶ
北朝鮮が忘れてはならないこと
靖国は、外交問題ではない
第七章 新たなアジア主義―麻生ドクトリン
SARSと人間の安全保障
価値の外交
民主主義は終わりのないマラソン
自由と繁栄の弧を広げる
国造りのお手伝いをする
中央アジアの「グレート・ゲーム」
自衛官という外交官
アジアとのしなやかなネットワーク
おわりに

感想・備忘

2012年の読了時のレビューを転記します。


メイデン閣下が外務大臣だった頃の著。
なかなか面白かったです。この人はやはり政治家である以前に「経営者」なんだなぁ…とところどころで感じる内容でした。

面白かったのは、外務大臣就任後、日本のODAで建設されたニューデリーの地下鉄を視察した際に現場担当者が言った話。

最初の現場説明の際、集合時間の八時少し前に行ったところ、日本から派遣された技術者はすでに全員作業服を着て並んでいた。我々インドの技術者は、全員揃うのにそれから十分以上かかった。日本の技術者は誰一人文句も言わず、きちんと立っていた。自分が全員揃ったと報告すると、「八時集合ということは、八時から作業ができるようにするのが当たり前だ」といわれた。
悔しいので翌日七時四十五分に行ったら、日本人はもう全員揃っていた。以後このプロジェクトが終わるまで、日本人が常に言っていたのが「納期」という言葉だった。決められた工程通り終えられるよう、一日も遅れてはならないと徹底的に説明された。
(略)
我々がこのプロジェクトを通じて日本から得たものは、資金援助や技術援助だけではない。むしろ最も影響を受けたのは、働くことについての価値観、労働の美徳だ。労働に関する自分たちの価値観が根底から覆された。日本の文化そのものが最大のプレゼントだった。
(略)

(P10~11)

新人研修だな…と読んで最初に思いました。
私も研修時に「9時就業開始だとしたら、9時にかけ込んで席について「セーフ!」って状態はすでにアウト。PCを使う仕事なら、9時にはPCを起動し終えて、今からすぐに仕事に取りかかれる、って状態になっていないといけない」と言われ、基本的に30分前には準備完了になってないとダメ…と言われたものです。

今は…インド状態です…。


その後、コロナの影響でリモートワークが始まった際は始業5分前に起きるとかいう状態になったこともありました。(深夜2時までその分Web会議が入っていたという言い訳…)
直近はちゃんと始業時には仕事に取り掛かれる状態になっています。
安倍さんの著書と併せて再読出来たら、また今時点での感想を追記したいと思います。

 

印象に残ったところ

私は外務大臣をやらせていただいていることに心から感謝している。なぜなら、外務大臣としてさまざまな国を訪ね、各国要人と話すことで、世界における日本の位置づけを改めて確認することができるからだ。
─ 12ページ

日本は、開始当初からODAに一つの意思を込めてきた。適切な環境とインセンティブ、仲間からの絶えざる励ましさえあれば、人は成長に向けて努力をするものであり、その努力を助けることこそが、日本流のODA政策でなければならない、という思想だ。決して安易な「援助漬け」にしてしまってはならない。それは結果的に開発途上国の自立にとって妨げにしかならないからだ。
─ 32ページ

むろん、ニートが社会に参加していくことには大賛成である。が、その議論の前提として「すべての人が仕事での自己実現をすべきだ」などという極端な理想論を置くのはいかがなものだろうか。それではむしろ、世の中に失意と落胆が満ち溢れる結果しか生まないのではないだろうか。
─ 45ページ

豊かな時代には、「自己実現」を達成したくて頑張る者は、思う存分やればよい。しかし、すべての人に創意工夫を求めて「自己実現」を要求するのは、間違っているのではないかとも思うのである。
─ 45ページ

戦後、民主・自由・平等を掲げて進められてきた平準化教育は、まだまだ近代工業化社会の発展途上にあった日本には適していたのかもしれない。最も必要とされた労働者、サラリーマンを量産する上では、実に優れたシステムだったからだ。
─ 63ページ

考えてみていただきたい。仮に人類がみんな同じような財産を得て、いわゆる「格差社会」がなくなったとしても、別の格差が必ず生じる。たとえば美しい人、そうでもない人の不平等は自ずと発生する。美女や美男は配偶者に恵まれやすくなり、そうじゃない人には、声に出さなくとも「不平等」との思いが芽生えてくる。
─ 66ページ

国家のために尊い命を投げ出した人々に対し、国家は最高の栄誉をもって祀らねばならない、ということは、普遍的な原則として世界中で認められていることである。これを否定する国家は存在しない。そうでなければ、なぜ命を賭してまで戦わねばならないのか、国家は兵士に説明ができない。
─ 142ページ

靖国神社は、古事記や日本書紀に出てくる伝承の神々を祀る本来の神社ではない。したがってその設立趣旨、経緯から、靖国は神社本庁に属したことがない。伊勢神宮以下、全国に約八万を数える神社を束ねるのが神社本庁だが、靖国神社はこれに属していないのだ。戦前は陸海軍省が管理する施設だった。また靖国神社の宮司も、いわゆる神官ではない。
─ 148ページ

私は愛国者である。愛国者の一人として、日本は、知恵と指導力を持った大人の国でありたい、と願っているのだ。それがアジアを偉大なネットワーク社会として発展させるに違いない。
─ 186ページ

同じ労働を、同じ努力を、今から三十年後を夢見て行う。やがて建つ、風通しのよい家々が作るだろう平和な集落の様子を遥かに望みながら進めるのだとしたら、それは、暗闇の中の手探りとは雲泥の差をもたらす歩みとなるだろう。
─ 188ページ

 

書籍など

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