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【読書記録】落語家はなぜ噺を忘れないのか

書籍情報

書籍名:落語家はなぜ噺を忘れないのか
著者:柳家花緑
出版社:角川SSコミュニケーションズ
レーベル:角川SSC新書
発売日:2008年11月10日

購入日:ー
読了日:2014年12月19日
レビュー日:2014年12月19日

 

目次

はじめに

第一章 落語家はなぜ噺を忘れないのか
一五四本ある持ちネタ/熟成されていくネタ/稽古が足りていないネタ/一度覚えたものの現在の自分に合っていないネタ/ネタはどうやって覚えるか/初めは丸々コピーして覚える/覚え方を覚える/古今亭志ん朝師匠の一二の教え/立体的に刻まれた記憶/噺に刻み込まれた情報/試練の口上もの

第二章 いかにして噺に命を吹き込むか
ウケればいいのか?/もともと噺は面白く作られている/笑いがなくても心に残る/噺のツボに向けて進む/登場人物の日常の一部を切り取る感覚/噺は場を選ぶ/「リアリティ」より「らしさ」/記憶に残る師匠の酔っ払い/「間」のマジック/突っ込みの妙/柳家花緑の転機/古典を壊すということ/「守・破・離」の教え/演劇から学んだ優先順位/ネタの再構築/スパイスとしてのギャグ

第三章 落語家にとっての噺の種類
ネタのレパートリー/噺のジャンル/噺を詰める/『初天神』の九シーン/三〇分の『初天神』が四分半に/難しい噺とは/柳家小三治師匠という存在/前座噺こそ難しい/落語の奥深さ

第四章 自分のネタを作る―『笠碁』への挑戦
師匠の十八番への挑戦/『笠碁』あらすじ/NHK脩三の七本のテープ/なぜ『笠碁』だったのか/花緑版のテーマ探し/台本づくり/五代目柳家小さん版『笠碁』の冒頭/柳家花緑版『笠碁』の冒頭/冒頭に込めた思惑/借金話と青春話/サゲの工夫/枕に込めた「時間」/初演での評価/まだ「いつでも高座にかけられるネタ」ではない/失敗と改正と/ひとの意見/六代目小さん師匠の『笠碁』/落語は「了見」

第五章 伝承芸としての落語
初めての稽古/噺の変え方も伝承される/一門を越えた伝承/上手い人は上手い人を好きになる/芸は盗め/花緑流の稽古/落語界のしきたり/熱狂空間の再現/落語の可能性

巻末 柳家花緑版『笠碁』 ―全文収録

おわりに

 

感想・備忘

2014年当時に記載したレビューを転記します。


本書は人間国宝となった故・五代目柳家小さんの最後の弟子であり、孫でもある柳田花緑さんの著書。柳家は三遊派と並ぶ江戸落語の二代勢力であり、五代目柳家小さんはその弟子、門下生の数や群を抜いているため、立川談志一門などのエピソードも登場し、落語界の様々な小話も読めます。

タイトルからすると、なにか記憶術のようなものがみれるのか?と思います。
私も少しそういった面を期待して購入しましたが、そこは本書の伝えたいところとは関係がないようです。
ですので、記憶術系のネタを期待してみると肩透かしをくらいます。
目次をみても分かるように、「なぜ噺を忘れないか?」は第一章で終わってしまっていて、残りは筆者の落語との関わりがメインになっています。

ほかにもネタの中の一行、一語に刻み込んできた情報があって、この部分ではこう教えられた、こんなことに気をつけて稽古した、前回高座にかけたときはこういう気もちでこんな言い方をしたらお客さんに伝わった…などなど、それは実に多くのものです。
噺の中のひとつひとつの台詞が、太い記憶となって立体的に刻まれているからこそ、噺をしているときに瞬時に思い出されるわけです。
(p43)

噺を忘れないのは、それが立体的な記憶となって刻まれているから…。
一章でこれを述べ、以降は、筆者自身の立体的な記憶とはどんなものか、が書かれています。

もっとウケたい、とギャグを満載にした噺をしていた時から、「噺」自体の魅力を引き出すために無駄なものをそぎ落とした噺をするようになり、そこに自分らしさを付け加える…花緑さんが今も試行錯誤しながら落語と向き合ってきた姿勢は、ビジネス書としても見ることができると思います。

 

印象に残ったところ

 

書籍など

コメント

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