書籍情報
書籍名:驕れる白人と闘うための日本近代史
著者:松原 久子 (著)/田中 敏 (翻訳)
出版社:文藝春秋
レーベル:文春文庫
発売日:2008年09月03日
購入日:ー
読了日:2016年12月29日
レビュー日:2016年12月29日
目次
訳者まえがき
序章 「西洋の技術と東洋の魅力」
第一章 世界の端で 「取るに足らない国」だった日本
第二章 劣等民族か超人か 「五百年の遅れと奇跡の近代化」という思い込み
第三章 草の根民主主義 江戸時代の農民は「農奴」ではなかった
第四章 税のかからない商売 商人は独自の発展を遂げていた
第五章 金と権力の分離 サムライは官僚だった
第六章 一人の紳士 初代イギリス駐日公使・オールコックが見た日本
第七章 誰のものでもない農地 欧米式の「農地改革」が日本に大地主を生んだ
第八章 大砲とコークス 日本はなぜ「自発的に」近代化しなかったのか
第九章 高潔な動機 「白人奴隷」を商品にしたヨーロッパの海外進出
第十章 通商条約の恐ろしさ 日本はなぜ欧米との「通商関係」を恐れたか
第十一章 茶の値段 アヘンは「中国古来の風習」だと信じている欧米人
第十二章 ゴールドラッシュの外交官 不平等条約で日本は罠に陥った
第十三章 狙った値上げ 関税自主権がなかったために
第十四章 顎ひげとブーツ 欧米と対等になろうとした明治政府
第十五章 猿の踊り 日本が欧米から学んだ「武力の政治」
第十六章 たて糸とよこ糸 今なお生きる鎖国時代の心
著者あとがき
参考文献
感想・備忘
2016年当時に記載したレビューを転記します。
「我々の歴史こそ世界史であり、あらゆる民族は我々の文明の恩恵に浴することで後進性から救われてきた」――そんな欧米人の歴史観・世界観に対し、日本近代史に新たな角度から光を当てることで真っ向から闘いを挑む。刊行当時、ドイツで大きな物議を醸した本書は、同時に、自信を失った日本人への痛烈な叱咤にもなっている。
(本書カバーより)
著者の『日本の知恵 ヨーロッパの知恵』よりも、こちらのほうが読むにはいいかなと思いました。
原著の出版が1989年であることを考えると、『日本の知恵 ヨーロッパの知恵』と同じく、当時の社会では斬新な切り口であったのかな、という気はしますが、翻訳版が2000年代の出版であることを考えると、もう少し補足があっても良かったのではないかと思います。
前著で残念だな、と思った、海外生活が長いという著者の強みを多少活かしている(海外文献の参照、紹介など)と感じましたが、それでも日本のことについては随分具体的な数値(記載されている参考文献をみるに、ここからの引用であることは明らかですが)をあげられているのに、海外の件については抽象的な物言いに留まっているのが引っかかります。
前著もそうですが、この書きっぷりでは文化史学という博士号までとっているという著者の肩書が逆に肩透かしな感じがして個人的に残念でした。個人的体験を通り越し、まるで妄想の感情論のようだと感じてしまう部分が多々あったからです。
しかし、私がこう感じるのが1980年代からの総体的な人々の認識の変化だということであれば、ある意味で著者が訴えていた物事が社会に浸透したということなのかもしれません。
印象に残ったところ
コメント