この意味から、現代の卓越した技術者は、優れた技術者であると同時に秀でた芸術家でなければならない。科学者の知恵と芸術家の感覚とをあわせ持たなければならない。
ー 218ページ
書籍情報
書籍名:本田宗一郎夢を力に
著者:本田宗一郎
出版社:日経BPマーケティング(日本経済新聞出版)
レーベル:ー
発売日:2001年07月01日
購入日:ー
読了日:2017年02月04日
レビュー日:2017年02月04日
目次
はじめに
第一部 私の履歴書
1 浜松在の鍛冶屋に生まれる
2 自動車修理工場に見習奉公
3 小僧っ子から神様へ
4 若造と二人で「浜松支店」
5 ピストンリング製造に苦闘
6 バイクからオートバイづくりへ
7 東京に進出、初の四サイクル
8 借り着で藍綬褒章を受ける
9 不況下、不眠不休で代金回収
10 国際レースに勝ち世界一へ
11 米国並みの研究費をつぎこむ
12 社内にしみわたる理論尊重の気風
第二部 履歴書その後(一九六二年―一九九一年)
1 疾風怒濤の十年
2 F1への挑戦
3 小型自動車に賭ける
4 さわやかな退任
5 もうひとりの創業者、藤澤武夫
6 葬式無用
第三部 本田宗一郎語録
三つの喜び
製品の美と芸術
資本とアイデア
技術と個性
自戒―工業的道義心について
工場経営断想
TTレース出場宣言
目前の利益にこだわるな
ざっくばらん人生
得手に帆を上げ
「悪い子」に期待する
冗句(Joke)のない人生は無味乾燥だ
ひとりよがりを排そう
まず自分のために働け
車のメーカーとしての責任
退陣のあいさつ
私のものの見方、考え方
おわりに
本田宗一郎年譜
感想・備忘
自動車修理工から身を起こし、「世界のホンダ」を一代で築いた日本のビジネスヒーロー、本田宗一郎。彼が自らの前半生を回顧した「私の履歴書」を中心に、人間的魅力に満ちたその生涯をたどる。後半部には、彼が社内報等に寄せた文章をもとにまとめた「本田宗一郎語録」も収録。
(本書裏より)
ホンダの創業者、本田宗一郎の回顧録&伝記のような入門書。
口コミを見ていたらこの1冊が入門書としては一番良さそうでしたので購入してみました。
自分も社会人としてそこそこやってきた時期に読んだので、胸が熱くなることは勿論、初心を思い出して喝を入れられたような読後感です。
印象深かったのは、語録に収録された「技術と個性」に語られる《個性》とはなにかを本田氏なりに解釈した一節。
一見「自動車」とは全く関係のないマチスやピカソの絵画から始まるこちらの談話は、氏の深い洞察力を垣間見れてとても面白かったです。
もし実物に似ていることに絵の価値があるとすれば、どのように巧みに描いても写真にはおよびません。最近は優れた色彩写真さえもできております。
しかし、いかに写真が進歩しても絵画が尊ばれるゆえんは、絵に描いた人の独自な見方―個性が盛られているかたであります。
個性の眼で見、個性によって感じられたものが描かれているからであります。
同じリンゴにしても、北国の寒い冬を凌いだ枝に実ったリンゴを想像して描いたもの、あるいは信濃の高原の、澄んだ大気の中に美しい娘さんたちによって摘まれたリンゴを思って描いたもの、あるいはまた、酸味をともなった甘味のあるさわやかな味感に心を惹かれて描いたもの等、描く人の感じ方―個性に染められて描かれていればこそ、絵画には価値があるのであります。
技術にしても同様であります。個性の入らぬ技術は価値の低い乏しいものであります。p221
少し前の「製品の美と芸術」と併せて思うに、これが高度成長期を牽引した自動車メーカーの人々が感じていた、「自動車ってかっこいい!」という単純なワクワク感であり、それがあったからこその発展だったんじゃないかなぁ、と、モノづくりのなんたるかを改めて考えさせられます。
「三つの喜び」は、全文印刷してトイレに貼って毎日眺めたいくらい、モノをつくる人々にとっては良い訓示ではないかなと感じました。
印象に残ったところ
学問の深い教授、智謀のある軍人、手腕優れた政治家も確かにえらいには相違ありませんが、私は人のえらさは、世の中に貢献する度合のいかんにあると信じます。
ー 224ページ
限られた人生においてその人のなした仕事の質と量によって、その人の価値は定まると思います。すぐこわれるような粗悪な製品を作る人は、その人柄がどうあろうとも、技術者としては人格劣等であると断ぜざるを得ません。
ー 224ページ
コメント