上越博物館・美術館新潟ネタ

【博物館】国宝「太刀 無銘一文字(山鳥毛)」特別展示(2025/08/13-2025/08/24)

新潟県上越市にある上越市立歴史博物館に、岡山県瀬戸内市が所有する国宝「太刀 無銘一文字(山鳥毛)」を観に行ってきました~。

なお、本記事は日本刀「山鳥毛」の解説はほぼしておらず、今回の展示に関する背景などを妄想多めで語っている記事になります。真面目な山鳥毛の解説はSNSやWebサイトで多くの方がされておりますので、そちらをご参照くださいますよう、お願いいたします。

概要

新潟県の南のほうにある上越市。
上杉謙信の武勇を讃え、地元の青年団が中心になって大正15年(1925)に始まった謙信公祭(けんしんこうさい)が今年100回目を迎えることをうけ、様々なイベントが開催or豪華化しております。

この一環で、岡山県瀬戸内市が所有する、上杉謙信が所蔵していた日本刀「山鳥毛」が、この夏上越市立歴史博物館にやってまいりましたので、観に行ってきました。

国宝「太刀 無銘 一文字(山鳥毛)」について ー 備前おさふね刀剣の里 備前長船刀剣博物館(瀬戸内市)
https://www.city.setouchi.lg.jp/site/token/109319.html
※こちらに後で掲載する山鳥毛のパンフレットPDFが公開されております

謙信公祭 公式サイト ー 上越観光Navi
https://joetsukankonavi.jp/kenshinkousai/

新潟県上越市 謙信公祭第100回記念 国宝「太刀 無銘一文字(山鳥毛)」 公式サイト ー 上越観光Navi
https://joetsukankonavi.jp/sanchomo/

 

山鳥毛の展示の背景

過去記事に書いたことがありますが、元々山鳥毛は今回展示された上越市立歴史博物館のリニューアルオープンに併せ、2017年に上越市が当時の所蔵者(個人)から購入しようとした経緯がありました。

過去記事:20201103_山鳥毛とふるさと納税の話

しかし、購入者と当初合意した金額が徐々に吊り上げられてしまい、最終的に契約ができず破談になってしまいます。
これは今回の展示にあたって上がっている地方記事や、過去の上越タウンジャーナルのサイトでも説明がされています。

当時:
交渉難航は「想定外の事態」 国宝の太刀山鳥毛購入で上越市教委(2017-09-11) ー 上越タウンジャーナル
https://www.joetsutj.com/articles/80778459

当初10億円 最終5億円希望 市予算は3.2億円 国宝「山鳥毛」取得断念で上越市教委が会見(2017-11-21) ー 上越タウンジャーナル
https://www.joetsutj.com/articles/36097938

今回:
上杉謙信愛刀の国宝「山鳥毛」が上越市に里帰り 8月13日からの特別展示前に報道陣へ公開(2025-08-12) ー 上越タウンジャーナル
https://www.joetsutj.com/2025/08/12/170952

返礼品は購入した暁にはオープンする博物館の山鳥毛観覧チケットが貰えるということで、当時首都圏に住んでいた私もふるさと納税しまして、行く末を見守っていました。結果としては上記の通りとなり、納税者には経緯などが書かれたA4用紙数枚と、返金対応にするか、別の返礼品(科学館のチケットとか)にするか、山鳥毛はないけどリニューアルする博物館のチケットにするかという案内が送られてきました。
この紙、今回載せようかと思って本棚を探したのですが見つからなかったので、もし見つかったらあげてみます。
部分抜粋は、上述の当時のタウンジャーナルに写真が載っていました。

その後、このままでは海外流出するかもしれないという山鳥毛を、刀剣の産地として有名な岡山県瀬戸内市がクラウドファンティングを行い、無事購入するということになりました。

 鎌倉時代中期、備前国福岡の地で活動していた刀工集団「福岡一文字派」は、数多くの名刀を生み出してきました。
中でも屈指の名刀として知られるのが、国宝「太刀 無銘 一文字(山鳥毛)」です。豪壮な太刀姿と華やかな刃文が特徴的で、製作当初の鎌倉時代の姿をよく残している貴重な作例と言えます。また、この太刀は、戦国時代の名将「上杉謙信・景勝」親子の愛刀としても有名です。
令和2年3月22日より、国宝「太刀 無銘 一文字(山鳥毛)」は瀬戸内市の所有となりました。

国宝「太刀 無銘 一文字(山鳥毛)」について ー 備前おさふね刀剣の里 備前長船刀剣博物館(瀬戸内市)
https://www.city.setouchi.lg.jp/site/token/109319.html

ということで、購入された山鳥毛は、備前長船刀剣博物館で管理・保管され、年に1回ほど展示されているようです。

このときの瀬戸内市のクラファンのものは撮ってあったので載せます。
私は少額応援者だったので期間限定で備前長船刀剣博物館などを入場無料になるTHANKS PASSPORTと、返礼品でクリアファイルとDVD貰いました。オンラインショップで今も購入できるのでありがたいですね。
このクリアファイルの推しポイントは、正面と裏面両方ちゃんとプリントされていることこです。このこだわりに狂気を感じる(褒めてる)。

過去記事でも書きましたが、大学の博物館実習で岡山コースを選んだ私はこの備前長船刀剣博物館に実習生みんなで訪れた際に、展示を説明してくれた当時の学芸員の方のおかげで刀に対する漠然とした良いイメージが出来上がったので、ここに保管されることになったのは刀に対する熱量、知識、姿勢どれをとっても妥当だろうし、本当に良かったな、と思いました。
当時(20年近く前)は、立地もあって新規客はなかなか多くないけれど、リピーターさんが8割みたいなお話を伺った記憶がありますが、今は新規客もリピーターさんの層もグッと広がったんだろうなぁ…。

 

山鳥毛の展示の背景の補足(妄想)

上越市で購入できなかった背景で、所有者との金額の折り合い…というところだけ見ると お金お金お金 みたいなイメージ100%になってしまうので補足します。
当時の所有者が途中で金額を吊り上げた背景は、そもそもが元々5億、10億ができれば欲しかったという話もありますが、当時市内でこの購買運動に関して否定的な動きが多かったことも要因の一つになっています。所有者としては下限3億で、できる限り5億に近づけた金額だと嬉しい…(これは、3億でいいよ!ということじゃない、ってニュアンスだとサラリー的には思います)ということだったので、3億は自治体側の姿勢次第だったという感じなのかなと勝手に思っています。
当時の記事も残っていますね。

「税金で買わないで」上越市の国宝太刀購入に265人分の反対署名提出 採決は24日(2017-03-22) ー 上越タウンジャーナル
https://www.joetsutj.com/articles/82375639

市民側のフォローもすると、当時の上越市は色んなものを大リニューアルしていたせいもあって、良いも悪いもかなりじゃぶじゃぶに税金が使われていたという背景がありました。
正直いうと私の出身地などは新・上越市の端っこも端っこなので、謙信公祭や春日山城整備やその他市街の整備の恩恵を受けないので、地元民的には余計に冷えていた感があります。
都市伝説的にいわれていたのは、某施設のカーテンが超絶に良い生地を使っていて分けわからないくらい高かったり、よく分からない某箱物施設が出来上がったりしていて「税金の無駄使いだ」「ほかのところへ回せ」と言われていました。
そんな中の、金額が見える山鳥毛の購入だったので余計に反対運動が上がってしまったのでしょう。このあたりは反対運動した人たちに私の知り合いがいないので、伝え聞いた話からの推測でしかありません。

当時交渉に行った方の苦労も察します。
日本三大夜桜と謳われる高田城の夜桜ですが、高田城で復元された櫓は外から見るだけにしたほうがいいがっかり建造物として地元民には親しまれています。私も中に入ってしっかりガッカリしてきました。

上越市というのは、「モノ」がないんです。

モノというのは、例えばお隣長野県にある松本城のような天守閣や、同じ新潟県十日町の所有する国宝の火焔型土器のようなモノです。
上杉謙信という、戦国武将のなかでも超メジャーな武将のお城が「あった」と言われる土地でありながら、上杉家の宝は戦国末期に上杉景勝の移封によって山形に移ってしまい、山城という点では評価が高いけれども観光客からすると「何もない」春日山城しかない。
このため、高田城の櫓のなかに何かあるかというと、基本的に パ ネ ル です。
辛い。本当にとても辛い。先日小倉城(福岡)に行ってきたから余計にダメージが新鮮です。

モノが欲しい…。なんかこう、パッと「なんかすごい」っていう、良い意味でみんなが「いい!」って分かるような良い感じのもの… あとちゃんと上越市と結びついてて…春と夏(海)以外も通年で観光客が来てくれるようなモノが欲しい…

それが「山鳥毛」だったんです。
10年後も30年後も50年後も、次の100年後の謙信公祭でも、きっとこの刀がこの地にあれば、繋いでいけるものがあったんです。
誰だ無駄に良いカーテン発注した奴。

 

観覧当日

そんなこんなで、瀬戸内市のご厚意もあって、そして諦めなかった関係者の方々のおかげで、山鳥毛はこの夏、上越にやってきたのでした。
この感無量感と、一般枠数時間で完売に対する、市民枠が半分近く余ってしまったため、結果応募した市民全員当選というこの…なんというか…なんというか…という気持ちを抱いて初日に行ってきました。

チケットです。
今回不満があったことと言えば、たぶん一部の方以外みんなそう言うであろう郵送時の着払い(現金引換え)です。これは本当にやめてほしかった。せめて振込とか…なんか…もし次回あったらお願いしますお願いします。

あとおそらく市民枠はチケットの頭がJ(上越)で、一般枠は違う文字から始まっているんじゃないかな?と思い久しぶりにSNS回ってみたのですが、皆さんしっかりしているので画像で文字隠れていた。どうだったんでしょうか。

当日は3回くらいチケットを確認される場面があるので、展覧会中はチケットを取り出しやすいようにしておくと良いと思います。

 

上越市立歴史博物館の外観。
結構来ているのですが外観ちゃんと写真撮るのは今回初めてでした。
ここの屋上が花見の時期などは絶景スポットなので混みます。今回チケットを持っていなくても屋上は上がれるので、天気が良ければ行ってみると良いかもしれません。エレベーターは小さいです。

あと入口左手に待ち合いスペースみたいなものが出来ていて驚きました。
私が行ったときはそこまで混んでなくてここも誰もいなかったのですが、徐々にここで待機する人が出てくるレベルに混んでくるんですかね。
花見の時期でもないのに…すごい…(感動)

看板。
すごい…こんな…専用の看板までこの博物館に飾られる日がくるなんて…(感動)
反射で映りこんでしまったので、映り込み部分を消したりちょっと加工しています。

入ってすぐいる山鳥毛(ゲーム:刀剣乱舞コラボ)。
これは刀剣乱舞という刀を擬人化したソーシャルゲームの、山鳥毛を擬人化した方です。CV井上和彦氏。私も数年前まで審神者しておりましたが、スマホがぶっ壊れてアカウント分からなくなり帰還できなくなりました。すごい良く出来たゲームです。

この刀剣乱舞のプレイヤーさんを「さにわ」というのですが、さにわさんが会場にもたくさんいらっしゃって、「ようこそ…このような…このようなところまで…」と心のなかで感動していた。炎の蜃気楼のときもこういう現象が起こっていたんだろう

博物館は小さいので、このパネルから向かって右手に常設の物販と軽食スペース。
左手が常設展と今回の展示の入口です。
コラボグッズや瀬戸内市関連の物販は左手のほうになっており、チケットを持っていなくてもそこには入ることができます。
チケットを持っている方は、集合時間がチケットに書かれていると思うので、その時間前後に行き、チケットを見せると整理券というか整理番号の書かれたプラ板を貰えます。
時間になると呼ばれるので、その番号順に整列し、だいたい10組ずつ会場へ移動する、といった感じでした。

ただ、展示入口から山鳥毛の観覧スペースまでは常設展のなかを通るので、結果的にこの番号順にはならない場合があると思います。(1~10番までの人で会場に入ったあと、1番の人が寄り道すると2番の人が結果的に最初に山鳥毛を見ることがある、という感じ)

私の時は、観覧スペースの前に大きな高田城ジオラマがあるので、それの周囲にグルッと待機する感じでした。自分たちの番の一つ前までくると、チケットチェックがあるので見せる必要があります。

そうしてたどり着いた山鳥毛がこんな感じです。
写真はきれいなものが色々上がっているので、細部を観たい方はWebで探してくださいませ。
常設展は撮影禁止だったので、背景などはぼかしています。
この展覧ケースは360°回れるようになっており、後ろもみることができます。
本当にきれいだった…きれいだった…。語彙力がありません。

向かって左側のところに、欠けがあります。
これは実戦でついた傷だとされており、ロマンを感じますね。

1組の観覧上限は2分。
後ろの人もたくさんいるので、もちろんそれより早く終わっても大丈夫です。残り30秒になると「残り30秒です」ってアナウンスされるんですが、これが見えるところにタイマーがあって、2分経ったら声かけてくれるとより有難いな…と思いました。

2分経つとスペースからでなければいけないので、出て常設展に戻ります。
途中、企画展がやっておりそこも観て良いので、お時間のある方にはオススメです。今回すごく良かった。
和田村兵事資料が見た目雑に配置されていたのですが、あれは雑じゃなくて、なんかこう…哀愁的な問題でああいうレイアウトで展示したんだろうと勝手に思っています。違ったら恥ずかしいのでそうだと言ってほしい。
図録も買いましたが、キャプションや会場内での解説もほぼすべて収録されていて「このお値段でいいのか…」と思いながら帰ってきました。

 

もらったものと買ったもの

上述の企画展図録以外での購入品や貰ってきたものはこんな感じです。

お目当てだった山鳥毛のクリアファイルです。
コラボ商品なので、刀を両面で全身と拡大両方投影させる狂気はありません。
みてください、上越市立歴史博物館の文字が入っています。すごい…すごいよ…(感動)

左が山鳥毛のパンフレット。これは無料でもらえます。
右があまりに懐かしすぎてもらってきてしまった、長船刀剣博物館のリーフレット。リーフレット、20年前に実習の時にもらったやつと一緒だよ…!!すごい…ずっと使い続けられるくらいクオリティが高いということですね…すごい…ずっと語彙力ない…。

パンフレットは開くとこんな感じです。
山鳥毛の解説が詳しくあるので、鑑賞を待っている間にこれを読んでいると良いかもしれません。
上述の 備前おさふね刀剣の里のHPでPDF配布されているので、ぼかしをここでは入れておきました。いけない方はぜひ本家からDLしてみてください。

 

あと高田城のクリアファイルと、前売り切れていて買えなかった徳川四天王~の図録があったので買ってきました。
この高田城関係のものや博物館図録系はコラボ商品とは会計が別になりました。その会計のところに御城印売っていたので、これも買ってきました。なかなかこれを買いに行く機会がなかったので良かったです。

 

雑感

雑感、「山鳥毛の展示の背景の補足(妄想)」で書いたので燃え尽き症候群。
展覧会自体は、私の観覧の時に居合わせたさにわさん達みんなマナーもよくて会場でも物販でも静かに鑑賞されたり、列に並ばれたりしていて良かったです。
皆さんスタンプラリーに行かれるようでしたが、頑張って…と各スポットを知っている地元民としては本当に思いました。夏は歩くのだいぶ厳しい…。

高田公園のお堀の蓮が、来てくれた方を歓迎するように良い感じに咲いていました。

このあたり一帯はまだまだ正善寺ダムの水不足による節水が続いていて不便な部分もあるでしょうが、今回いらした方はぜひまた遊びに来てくれたら嬉しいですね。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました