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【博物館】エジプト考古学博物館所蔵 ツタンカーメン展~黄金の秘宝と少年王の真実~東京会場に行ってきました(2012/08/04~2013/01/20)

試験と試験の狭間の息抜きを兼ねて、東京の上野の森美術館で開催されているツタンカーメン展に行ってきました!
というわけで自分の備忘録を兼ねてレポ!!すっごく良かったです!

開催直後、8月が夏休み期間ということもあって激混み甚だしい噂や感想を各所で聞いていたこともあり、8月は見送って9月に行こうと思い、9月初めの平日に行ってきました。なお、後日友人らと一緒に行く予定があるので、その下見も兼ねていたのですが、下見してよかったなぁと思いました。

上野の森美術館 - 公式HP

当日、開館時間9時半なので、9時くらいに会場前に行くかなぁ、と思い、8時頃公式サイトに張ってある「現在の様子」を見たら、なんとその時点で人が並んでいるではないですか…
すごい気合いだ…と悠長に感心していたら、9時にはもう大行列。
しかもアホなことに、会場前まで行ってチケットを忘れたことに気がつきまして、当日券高いうえに平日もう来れる気がしなかったので一旦家に帰ったりしていたので、最終的に私は整理券を貰ってお昼過ぎの入館になりましたとさ…。

 

上野駅の様子

メトロは全然ですが、JR上野駅はツタンカーメン展一色!


植木も!


アトレの入り口も!


アトレはそこかしこに!
ちなみにこのデザインが一番可愛くて好きです。手をつないでツタンカーメンがアンケセナーメンを引っ張ってってる感じがほのぼのします。
しかしツタンカーメンの「誘惑」って…かわいい…。

 

会場の様子(館外)

公式サイトトップページに貼られている、「現在の様子」で並んでいる現状が確認できますが、写っているあれはほんの一部なので、あれをみて「余裕だな」って思っていくとものすごく痛い目を見ます…。

会場の見取り図(ウロ覚え)

黄色い矢印が、JR上野駅から会場までのアクセス。ビルの間の階段を通ります。
赤い矢印が、スタンバイ場所から入り口までの移動ルート。
整理券を受け取ったあと、記載されている集合時間になると、集合場所にいるスタッフが声張り上げて誘導してくれます。その後、スタンバイ場所に整列させられて、ちょっとずつ入り口方面へ送られます。
私が行った時は曇だったので平気でしたが、スタンバイ場所は直射日光直撃なので、日傘を持っていない人は結構辛そう…。入り口方面は、屋根とサーキュレーターが付いているので少し快適。会場での注意事項についてフジのアナウンサー出演のVTRが頭上に流れています。
スタンバイ場所からはスカイツリーがすごくよく見えるので、待ってる間に写真撮っている人が多かった。

そしてミュージアムショップにも行列ができています…。
その対策か、プレハブのギフトショップなるものが屋外に作られています。私は入っていませんが…。
とにかく人人人…。スタッフがひたすら声を張り上げていたりで賑やかです。スタンバイとかディ○ニーランドかと思いました…。

 

会場の様子(館内)

会場に入ると、まず広い部屋で2分ほどのオープニングムービーを見せられます。ほんとにデ○ズニーみたい…部屋の端に左右3台ずつ頭上にディスプレイが設置してあり、立ち見なので、先に入らないと良く見えない!ってことはないです。でもずっと立ちっぱなしできて、ここでも立ちっぱなしはちょっとキツイかも。
それが終ると、いよいよ会場です。
会場は展示内容に合わせて6つのステージで構成されています。

ステージ1:ツタンカーメンの世界(新王国時代とは)
ステージ2:古代エジプト人 スピリチュアル・ワールド
ステージ3:ツタンカーメンのミステリー
ステージ4:世紀の発見 ツタンカーメン王墓
ステージ5:ツタンカーメンの真実
ステージ6:黄金のファラオたち

ステージ3くらいまでは人ぎっちりですが、それを過ぎると疲れ始める人も出てくるので(笑)、ちょっと余裕が出てきます。だいたい音声ガイド案内があるところに人が溜まっていますが、個人的に「人いっぱいだなー」と思った展示品は、

・ツタンカーメンの立像
入ってすぐのところにある。背面にツタンカーメンのカルトゥーシュがあると案内されるため、それを見る人行列。

・アメンヘテプ製の船の模型
人がいっぱいいてなかなか見れなかったので、今回は遠目で諦めました。

・サトアメン王女の椅子
これも人がいっぱいだったので今回は諦め。

・ツタンカーメンの棺形カノポス容器
今回の目玉になってるやつです。360℃みれますが、ぐるりと人。

・チュウヤの人型棺
一番キンキラかつでかいので、必然的に人がいっぱいですが、これも360℃みれて人はぐるぐる回るので、見れるには見れます。

こんな感じです。
個人的にはチュウヤのカノポス厨子と、ツタンカーメンの彫像用厨子と支柱付台座が面白かったので、空いてたのをいいことにじっくり見てきました。
臓器を納めるカノポスが入っていた厨子や、目に見えない王の姿を保持するといわれる厨子…びっくりしたのは、この二つの厨子の側面の上の方、どちらにも蛇(頭が蛇じゃないときもあったけど)が描かれていたこと。しかもその側面の形が、直角三角形になっていました。
頭をよぎったのは、ピラミッドの「大回廊」。

吉村先生が何度もテレビで紹介していたけど、王の魂(バー)は、ピラミッドで力を回復している…という説で、蛇はエジプトで生命の象徴であり、王の魂は直角三角形のようになっている大回廊を、蛇の波状運動のように上下しながら登っていき、力を増長させている…。

論文読んでいないのでもしかしたらどこかにちゃんと書いてあるかもしれないんですが、あの説の根拠ってきっとこれなんだろうなぁ…と胸熱。
チュウヤのカノポス厨子なんかは、蛇が最後、大きな口をあけて「生命」を表すヒエログリフ、「アンク」を飲み込もうとしていたんです。まさにそうじゃない!!!胸熱!!!
あとダチョウの羽が無くなってしまった扇は、カーターのツタンカーメン発掘記を思い出して「おおおおおお…!」ってなった。

ただ、人がいっぱいで、ずっとどかずに見てる人や、逆に見れない人を作らないためだと思うのですが、スタッフがどの展示室でも大きな声で指示を出しているので、個人的にゆっくり浸ることはできませんでした…。
上野の森美術館は近くの美大の学生がスタッフで借り出されているようで、動かない人や見えない人への配慮はありがたいんだけど、あくまで「美術館」ですので、もう少し見ている人が「鑑賞」できるように配慮していただきたいなぁ。なんだかこれが結構大きくて、面白かったけどこう、終った後の充足感というか、「はぁ~」という余韻があまりなく…。残念…。

しかし今回の展示は、図録がものすごいいいので、変な話行けなくても図録で十分楽しめちゃいます。遠目でしか見れなかったあれやこれも、1点1点すべて図録に収録されているので、「おおおぉ…!!」と感動。しかもほとんどの品について解説がついてます。すごい!!
私はミュージアムショップで図録とクリアファイルと、あとお土産用にお菓子を買いました。博物館でお菓子は買わないんですが、今回は配るようだったので、面白いしいいかなと。


カルトゥーシュ。
クッキーは、クッキーにもカルトゥーシュプリントされているので、配る際のネタ性は抜群です。

 

音声ガイド

次回友人たちと来る際に、音声ガイド借りたほうがいいのかの下見で借りてみた。
なお、上野の森美術館で音声ガイド借りるの初めてだったので毎回これなのか分かりませんが、一般的な、イヤホンをして手元で操作するタイプでなく…イメージ的には首から携帯ぶら下げてる感じ…。聴きたいときに、音声ガイドを耳に当てる方式で、子ども抱っこしてる人とかは厳しいかも。

<音声ガイド目録>
はじめに
ステージ1:ツタンカーメンの世界(新王国時代とは)
1 ツタンカーメンの立像
2 アメンヘテプ2世の船の模型
3 アメンヘテプ3世ととティイ王妃の銘入りチェスト

ステージ2:古代エジプト人 スピリチュアル・ワールド
4 プタハメスのシャブティ
5 サトアメン王女の椅子
6 牛の頭部像

ステージ3:ツタンカーメンのミステリー
7 アクエンアテン王の巨像頭部
アテン神を礼拝するアクエンアテン王一家のレリーフ
8 ネフェルティティ王妃の頭部像
王女の頭部像
9 チュウヤの人型棺

ステージ4:世紀の発見 ツタンカーメン王墓
10 ライオンの飾りのついた化粧容器
11 子どものカルトナージュ・マスク

ステージ5:ツタンカーメンの真実
12 ツタンカーメンの半身像
13 下エジプト王冠を被ったツタンカーメンの像
上エジプト王冠を被ったツタンカーメンの像
ツタンカーメンの彫像用厨子と支柱付台座
14 有翼スカラベ付き胸飾り

ステージ6:黄金のファラオたち
15 ツタンカーメンの棺形カノポス容器
16 ツタンカーメンの黄金の儀式用短剣と鞘

「はじめに」は案内と、音声ガイドの使い方。音声ガイドを借りたあともしばらく待ち列になるので、その間に聞けます。

 

感想と事前学習用本まとめ

最後に感想と、事前学習で私が読んだ本をご紹介。

まずは外せないツタンカーメン発掘記シリーズ。
これを読んだあとにツタンカーメン展に行くと、小さな遺物1つ1つに感動します。展示品自体の素晴らしさに加えて、今あの姿で私達が見れることのありがたさ、発掘に携わった人々や、これを今まで保存し続けてくれた人たちへ頭が下がります。

ツタンカーメン発掘記 上 (ちくま学芸文庫) - NDL ONLINE
ツタンカーメン発掘記 下 (ちくま学芸文庫) - NDL ONLINE

2023/11/11 追記
私はちくま学芸文庫を当時購入して読んでいたのですが、現状絶版になっています。
ただ、筑摩書房の旧版はNDLで個人送信実施しているようです。すごい時代。

ツタンカーメン発掘記 (筑摩叢書) - NDL ONLINE


オールフルカラーでエジプトの品々が見れちゃう新書。
この本1冊読むころには、カルトゥーシュや、アンクやシェンなど、基本的なヒエログリフがなんとなく理解できるので、展示を見に行っても面白いです。いたるところにアンクやシェンが描かれているのに気づくはず。
ちなみにこれについてはブクログに簡単なレビューあります。 → レビュー

古代エジプト人の世界 : 壁画とヒエログリフを読む : カラー版 (岩波新書) - NDL ONLINE

 

今回図録がこんなにいいと思っていなかったので、予習&復習用に買っておいた図録。
今回来ていない展示品も多く掲載されています。私はアンケセナーメンがツタンカーメンに香油を塗ってるのが描かれてるあの椅子が生で見たかったが…流石に来なかったか…。

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なお、私が小学校の頃はじめて読んだツタンカーメン本はこちら!
たまに、小さい子向けのツタンカーメン入門書を探しに来られる方がいるようですので、そういった場合はこちらがおススメです。このシリーズが学研と並んで好きでした…。初版が出た頃には暗殺説が囁かれていたので、この本にも暗殺説が出てきています。

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やっぱり一番面白かったのはカーターの「ツタンカーメン発掘記」でした。

この部屋におさめられた遺物が、ひとつの大きな深遠な思想の一部をなしており、遺物のそれぞれがある種の神秘的な力をもっていることは明らかである。アラン・ガーディナー博士が正しくも言っておられるように、「これらの遺物のなかに、ある神秘的な力が内在するという考えは、エジプト人独特の思想である」。われわれは、これらの遺物がなにを意味にしているか、遺物にふくまれる神性をおびた神秘力とはなにかを発見しなければならない。科学的な探求はもっとも綿密な調査を必要とする。したがって、ほろび去った神学の葬祭に敬意をしめさないとか、ましてや、この宗教的副葬品をかき乱して、病的な好奇心の興奮を満足させるなど、われわれには思いもよらないことだったとここに書いても、われわれを誤解するひとはあるまいと信じている。われわれの仕事は、このすこぶる興味深い、複雑な葬祭と信仰について、考古学、歴史学的にすでに深められた知識の総体に、さらになにものかをつけ加えるため、あますところなく調査することである。

ツタンカーメン発掘記 下巻 第三部 墓は語る 第一章 奥の宝庫について p224

お恥ずかしながら私は、ツタンカーメン発掘記を読むまで、カーターもどちらかというとアメリカンドリームよろしく、「財宝を見つける」ことに執着していた人、というイメージだったので、とにかくこの発掘記を読んでただただ「カーターかっこええ…!」と思いました。
特に「奥の宝庫」と呼ばれる、カノポスが納められていた厨子や、多くの遺物が発見されたチェストなどが納められていた部屋に入るシーンでの想いを述懐した下記の一文に、彼の「考古学者」としての誇りや使命感が見える気がします。(※カーターは独学で勉強してきた人なので、それを踏まえると余計にすごい…)

 

小さい、飾りけのない部屋ではあるが、やはり、過去の感動的な追憶がここにはこもっている。三〇〇〇年以上、だれも足をふみいれなかった、聖域にも似たこの部屋に入っていくとき、侵入者は恐怖といわないまでも、畏敬の念にうたれざるをえない。長く保たれていた平和をみだし、永遠の沈黙をやぶるのは、冒瀆のようにさえ感じられる。およそこの上なく鈍感な人間でも、このけがされていない閾をまたぐならば、「途方もない過去」からの秘密と影からにじみ出る怖れと不思議を、きっと身にしみて感じとるに違いない。敬虔深い人々がその手でこの場所においてから、何世紀も何世紀も、立ちつくして、部屋をみたしていた生命のないさまざまな遺物の存在によって、部屋のなかの静寂な空気はいっそうその静けさを深め、われわれになんとも言えない神聖な義務感をひきおこさせ、遺物に触れることはおろか、閾をまたいで、足を踏みいれることさえ、ためらいの気持ちをひきおこさせるのである。こうした畏敬の感情に根ざす感動を、言葉でつたえることは難しい。好奇の気持ちなどは抑えつけられてしまう。足のひと踏み、ごくささやかな騒音も不安を高め、知らず知らず、畏敬の念を深めていく―侵入者は、無言になってしまう。
過去からの呼びかけは、部屋に足を踏みいれ、探求しようとする人びとを躊躇させる。しかし、最後に、われわれがいかに深い畏敬の念をいだこうとも、考古学者の任務は現在にある、考古学者は隠されたものを解釈し、彼を目標へみちびく階段がどのようなものであれ、それを記述しなければならないと、気がつくのである。

ツタンカーメン発掘記 下巻 第三部 墓は語る 第一章 奥の宝庫について p224

 

こうしたカーターの発掘方法について、解説で尾形氏がこう述べられています。

カーターの調査方法は、考古学の師であるピートリの精神を忠実に踏襲している。ピートリは、それまでの発掘が、もっぱら「宝探し」で、美術品探しに主眼がおかれていたのに対し、あらゆる遺物は、古代人がわれわれに残してくれたという意味では同じ価値をもち、発掘者の主眼で重要であるかそうでないかを判断すべきではなく、しかも発掘はある意味で遺跡の破壊であり、科学の実験と違って他の学者が検証することはできないのであるから、慎重の上にも慎重に行われていなければならないとした。そのため、すべての発見物について、それがどこでどのような状態で発見されたかを図および文字でできるだけ正確に記録したうえで、採集・保管すべきであると主張した。
カーターは、ピートリの方式に写真という新しい記録保存の手段を付け加えた。

ツタンカーメン発掘記 下巻 解説 p422


 

今日エジプトの調査で美術品を獲得しようと考える者は誰もいない。出土品はすべてエジプト政府の所有に帰し、実測や研究も原則としてエジプト内部で行われる。発掘調査はすべて、学術情報のみを求めて遂行されるのである。

ツタンカーメン発掘記 下巻 解説 p426

 

アメンからアトン信仰へ、そしてまたアメンへ。
エジプトの古代信仰上最も激動の時代にわずか数年君臨した少年王ツタンカーメン…。
盗掘されつくしたといわれる王家の谷で、三千年の間静かに眠り続けていた彼は、カーターに発掘されることを待っていたのかもしれないなぁ…と、発掘記をみて思いました。黄金の財宝もあるでしょうが、慎重な発掘作業と綿密な記録のおかげで、今日もこうして私たちは彼の秘宝を見ることができ、失われた古代エジプトの世界の一端を知ることができるのですから。
特に写真は本当にすごい!発掘記には掲載がなかったのですが、図録にはダチョウの扇の発掘時の姿(まだ羽がついてる)の写真も掲載されていて、当時の臨場感というか、感動が伝わってきます。

カーターは財産を築くことはできなかったけど、こうして後世、ツタンカーメンが「世界一有名なファラオ」である限り、名前と功績は語り継がれていく。
考古学者としては是に尽きるものはないんじゃないかなというくらい。
三千年間歴史の狭間に葬られていたこの少年王は、エジプト考古学に人々の興味をひきつけ、より良い保存、未来への継承という意味では、一番幸せなファラオになったのではないかなぁと思います。

昨今、セティ1世の墓の地下や、ギザの三代ピラミッドの地下など、発掘されればツタンカーメンに匹敵するのではといわれる発掘計画が進んでいるようですが、もしまだ眠りについているままのファラオや秘宝があるとするならば、彼らも、彼らにふさわしい人々が、自分たちのもとへたどり着くのを待っているのかなぁ…とか。

そんなこんなで、大人になっても浪漫をかきたてられちゃう、エジプト展なのでした!
エジプト行きたいなぁ…!

※2012/10/7追記
アメンとアトンを逆に書いていたので直しました…

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