鳥尾小弥太

鳥尾家の諱(名前)の読み方の話

概要

今年は鳥尾の誕生日に何かしたいと思い、誕生日ぴったりにはできませんでしたが、恵の露の音声動画を作りました。

002_恵の露(鳥尾小弥太)(Youtube)

以下の記事から続いた、意訳版をCevioの音声で読み上げたものになっています。

恵の露~鳥尾小弥太の回顧録~

音声ソフトはCevioさんを愛用しているのですが、別のところだと最近はずんだもんが喋っている動画を見がちです。可愛い。

文字起こしをしていると「この字はどういう字なのだろう」と、自分が実際は読めていない字が顕在化するし、音起こしをすると「どういう読み方なのだろう(アクセントなのだろう)」と、分かっていないものが顕在化するので、良い勉強の機会だな、としみじみ思います。

今回音起こしをしていて改めて「なんだろう」と思ったのは、鳥尾の諱の「読み方」です。
短いですが、備忘録。

2024/02/18 追記
コメントでご指摘いただいている通り、本記事で考察した鳥尾小弥太の諱および父親の名前の読み方に誤りがありました。
末尾に訂正情報を記載いたしますので、よろしくお願いいたします。

 

鳥尾のお父さんの諱について

恵の露では、

余が父君は、中村宇一右衛門と云ふ、諱は敬義。

という一文があります。
今回これを音起こしするにあたり、「敬義」の読み方を何にするか、というのに最初に詰まりました。同年代の読み方が分かっている方を含めると、候補はこのように。

・たかのり
・たかよし
・のりよし

さてどれなのだろうか。
日本文化の特徴として、男系は親の名前をそのまま「何代目」という形で踏襲するか、親(親というより、継ぐ家)の一字を取っていく、というのがあります。
新身分が明記されている=旧身分が分かってしまうことから、色々見るには許可のいる壬申戸籍を大学のときに某地域の家系図読解でゼミで読んでいたことがありますが、そういった明治前後の記録や、江戸時代の檀家帳などをみても、分家と本家の家系図を追っていくとそういう枝が見えて面白かったりしますね。

鳥尾小弥太の家系というのは、この「敬」という字を代々使いがちなので、それを洗い出して今回はアテをつけ、採用することにしました。

鳥尾家の諱について

鳥尾の諱は「敬孝(高)」(または照光)といいますが、これのルビが振られているものを私は見た事がありません。
(多分どこかにはあるのだと思いますが読めていないだけだと思うので、違っていたら以降の記事内容はすべて私の学習としては意味がありますが、コンテンツとしては意味なしになることでしょう…)

まずは鳥尾家の諱をピックアップしてみましょう。

・父  :敬義
・本人 :敬孝(高)、照光
・子  :光
・孫  :敬光
・ひ孫 :敬孝
・玄孫 :文孝

こうなります。
さきほどの一字取る法則でいくと、光くんの子の名前(鳥尾から見たら孫)の名前が見事に分散されていて色々考えるものがあります。

脱線しますが、いわゆる「伝統」や、或る意味で作られた「アイデンティティ」の色が濃くなる時というのは、逆にいうとそれが薄くなっている、弱くなっている、揺らいでいることの裏返しだと私は思っています。つまり、そこに回帰しようとしているということは、それをしないといけないくらい何かが不安定になっている、ということだろうと。
なので、幕末や昭和初期や、昨今は過激な議論をする人が目立ちがちなのでしょうね、と歴ヲタは妄想しがちです。今は本当に幕末感ありますね。藩校(=大学)、私塾(=オンラインサロン)、米独立戦争後のゴタゴタ海外勢(=WW2の債権返済終わって定期収入のなくなった米)みたいな感じでYoutubeを見て「当時の人の感覚こんなんだったのかもしれない…」と考えるのがマイブームです。内ゲバはブルーになってしまうので勘弁してほしい。

そんなこんなで、分かっているご子孫の方の読み方を次に並べてみましょう。

・父  :敬義
・本人 :敬孝(高)、照光
・子  :光(みつ)
・孫  :敬光(のりみつ)
・ひ孫 :敬孝(あつたか)
・玄孫 :文孝(ふみたか) ※注

子である「光」氏は、姉の廣子さんが存命の際にインタビュー記事としてまとめられた雑誌に「みつ」というルビが振られています。(過去記事:【史資料】娘の語る鳥尾小弥太(日野西廣子「父の思ひ出」『大道』 昭和13年6月号)
私はこの雑誌を読むまでは「ひかる」という読み方だと思っていたので、当時かなり驚きました。これはおそらく小弥太が昔使っていた「照光」という諱からとっているのだと思います。

孫である「敬光」氏は、鳥尾家踏襲の「敬」と、小弥太、光氏の「光」を組み合わせたお名前で、「のりみつ」となっています。
ここでは「敬」の音は「のり」ですね。

今回分析するにあたって一番キーになる人物であるひ孫の「敬孝」氏。これは「あつたか」さんと言います。
氏は著書でも言われている通り、小弥太の妻である太以さんに溺愛されていたお子さんでして、諱が小弥太と同じになっています。(ここにもある種、家の揺らぎを感じてしまう歴ヲタ)
これをどう捉えるか、なのですが、今回私は「おそらく小弥太と同じ音を採用してはいないだろう」という説を採ることにしました。もし同音にして呼び捨てをすると、小弥太を呼び捨てにしているのと同じになるので、それは太以さん存命時はしないのでは、という推測からです。
これを採ると、小弥太の諱の読み方から「あつたか」が消えることになります。

最後に玄孫である「文孝」氏ですが、申し訳ありません、おそらく「ふみたか」さんだと思うのですが、ルビの振ってある記録などを読めておらず、確証がありません。このため注をつけています。
ただ、今回の分析材料からすると、「孝」の字を引き継ぐ形になっているな、というところです。

 

小弥太と父の諱について

さて、分かっているご子孫のお名前の音を振り返ると、このようになっています。

・父  :敬義
・本人 :敬孝(高)、照光
・子  :光(みつ)
・孫  :敬光(のりみつ)
・ひ孫 :敬孝(あつたか)
・玄孫 :文孝(ふみたか) ※注

では小弥太の諱の音を探っていきましょう。
「照光」に関しては、「てるみつ」だろうと考えられます。
息子にあたる「光」氏が「みつ」であることと、孫にあたる「照子」氏が「てるこ」になっているので、よほど凝っていない限りこれは問題ないでしょう。

問題の「敬孝」ですが、ひ孫にあたる同字の音が「あつたか」だとする場合、「敬」の字の音は「あつ」では無い、となります。
そうなると、孫の「敬光」氏に使われている「のり」という音になるだろうということで、こうかなと。

・父  :敬義
・本人 :敬孝(高)(のりたか)照光(てるみつ)
・子  :光(みつ)
・孫  :敬光(のりみつ)
・ひ孫 :敬孝(あつたか)
・玄孫 :文孝(ふみたか)

そして、「敬」が「のり」とすると、お父さんのお名前は「のりよし」になる、と推測されます。
なのでこう。

・父  :敬義(のりよし)
・本人 :敬孝(高)(のりたか)照光(てるみつ)
・子  :光(みつ)
・孫  :敬光(のりみつ)
・ひ孫 :敬孝(あつたか)
・玄孫 :文孝(ふみたか)

字と音の引継ぎに着目するとこうです。

・父  :義(のりよし)
・本人 :(高)(のりたか)、てるみつ
・子  :みつ
・孫  :のりみつ)、※姉妹 子(たかこ)、 子(てるこ)
・ひ孫 :(あつたか
・玄孫 :文(ふみたか

というわけで、今回の音読動画では、小弥太のお父さんの諱は「のりよし」とさせていただきました。

雑感

上述の名前をみると、父と子には一字、同字が使われていますね。
うちはTHE・庶民家系なのでこういう文化が仏壇の過去帳みても見当たらないのですが、士族家系や豪農とそこから分家で派生した農家の家系図みると、よくこういう傾向が見られます。
あとはお寺さんなどはやはり「字」で繋いでいるのが見えますね。
どうでも良いと言ってしまえばどうでもよいのですけれども、どうでもよいが積み重なって出来上がったのが文化とも言えます。時には重荷になる人もいましょうが、逆にその重荷に救われる人がいることもあります。
あまりに固執し過ぎると辛いし、軽んじすぎるのも悲しいので、ご飯とうどんとパンどれを主食にしますか、と選択肢があり続けるのと同レベルくらいで、こういう繋ぎ方もありますが、と脈々と残っていってくれるのが、個人的には一番良いのではないかな、と思ったりするのでした。

 

2024/02/18 追記
コメントでご指摘いただいている通り、本記事で考察した鳥尾小弥太の諱および父親の名前の読み方に誤りがありました。諱についての正は以下となります。
・父  :敬義たかよし
・本人 :敬孝(高)よしたか照光(てるみつ)
・子  :光(みつ)
・孫  :敬光(のりみつ)
・ひ孫 :敬孝(あつたか)
・玄孫 :文孝(ふみたか)大変お恥ずかしいことに、光氏の呼び名の論拠元とした大道(全く同じ号)に上述のルビがふってありました。

鳥尾小彌太(とりをこやた)先生は、敬高(よしたか)(いみな)し、得庵)(とくあん)と號す。幼名は一之助、後ち百太郎と(あらた)め、又鳳輔と稱された。弘化(こうくわ)四年丁未十二月五日、中村敬義(たかよし)の長男として(はぎ)に生る。

P32(鳥尾得庵先生 一、苦難の幼少時代 (橋本五雄))

史料を全然読み切れていないことが露呈しております。。。
ご指摘いただきありがとうございました!

コメント

  1. しゅうさん より:

    友様、はじめまして。
    「しゅうさん」と申します。初コメント宜しくお願い致します。
    さて、小弥太の父の名「敬義」の読み方ですが、友様もお持ちの「大道」(昭和13年6月号)の記事「鳥尾得庵先生」に、「敬義」の読み方は、「たかよし」とあり、小弥太本人の名「敬高」は、「よしたか」とありました。
    この記述は、関係者がご存知中ということもあり、信憑性の高いものではないでしょうか。

    ご参考までに。

  2. 友月庵(管理人) より:

    しゅうさんさま
    こんにちは、初めまして!
    コメントありがとうございます。
    大道読み直したところ、32Pにご指摘通り小弥太の諱は「よしたか」、父上のお名前は「たかよし」の記載がありました。
    よく読んでいないことが露呈してお恥ずかしい限りです。。。
    教えていただいて大変感謝いたしますm(_ _)m
    記事のほうにも後日加筆・修正させていただきますね。

    コメントありがとうございました!

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