雑記

【覚書】15歳の決断。-忘れられないNumberの記事を改めて読み返してみた-

男女ともに絶好調なロンドン五輪の日本サッカーチーム。
一時期私もサッカーをしていた時期があるのですが、高校卒業後はサッカー関係のスポーツライターになりたいなぁと専門学校を調べていた時期もありました。

今は試合もほとんど見なくなってしまったし、A代表もアンダーもJリーグも選手が全然分からないんですが、当時は試合もみたし毎月サッカー系の雑誌を購入して読みふけっていたので、ほんとにサッカー漬けの日々でした。
そんな当時、Numberで読んだある記事がすごく印象深くて、いまだにその号だけは捨てられずに取っていたりします。最近改めて読み返したら、やっぱりかっちょいいなぁと思ったので、備忘録。

Number 567号

2003年1月23日 567号の「Number」。前年の2002年韓日W杯でも活躍した、稲本が表紙です。懐かしい!

だいぶ補正かけてるので分かりづらいですけど、現物は読み込んでだいぶボロボロです。
そして、この号に収録されている、「15歳の決断。」が、私はすごく大好きです。

「15歳の決断。[高校サッカーか、クラブユーズか]」
文:梅田明宏
写真:山元茂樹

夢へと続く道は、15歳になると2つに分かれる。
ただ、楽しいからサッカーをしていた時期が終わり、
夢と現実、サッカーとそれ以外の途との接点を
見つけなければならない年齢がやってくる。
2つの道のどちらに進むべきか。中学3年生の悩みは深い。
p75-p80

2段組みの下駄箱。上段には2足のスパイク。下段には、1足のスパイクと、化学の教科書。これは、上段が「ユース」、下段が「高校サッカー」を表しているんですね。しかも高校サッカーのスパイクは、よく見ると穴とか開いちゃってるんです。

それだけに現在、中学生の年代では、代表を狙えるような優秀な選手のほとんどが、いずれかのクラブチームのJr.ユースに属している。
その少年たちがユースへの進路を選ぶ理由は、この一点に集約されていた。
「良い環境でサッカーができるから」
p76

「ユースと違って、高校は目標がいろいろ。プロを目指すヤツとか、ただ、体を動かしたいだけのヤツだとか。それで、意識の違いも出てくる。同じチームで高い意識を維持するのは難しいんです。自分のモチベーションも含めて」
思いつめるように話す高校2年生の言葉に、隣にいた少年たちもうなずいた。
p78-79

両者の評価は、本文中に出てくる上記に現れています。恵まれた環境のユース、あくまで勉強が主体の部活のサッカー。その差をあらわすように、本文中に掲載されている写真も、ユース関連はカラー、高校サッカー関係はモノクロなんですね。

本記事は、主体はJrユースに所属している少年たち。高校進学という時期を迎える彼らが立つ、「夢へと続く道」の岐路を写しています。

「ユースに行くって初めから決めてたんで」と、ユースに進む者、「できることなら残りたかった」と、ユースに進めなかった者、「強烈な個性を持ったユースという集団の中で、果たして自分は上にあがっていけるのか、正直不安だったんです」と、ユースに進めたのに、自信がなく進まなかった者…。

あるいは、その岐路の後。ユースに進んだのちに、ユース大会の観客数と選手権の観客数を比べて、「ユースはしょせん裏舞台、表舞台はやっぱり選手権です」と言う者、「ユースだと『上』はそのトップチームだけだけど、高校で活躍すれば他のJのクラブに行ける可能性も広がるから」とユースを蹴って高校サッカーを選択ことを後悔していない者。

「仮にプロがダメだった時、ユースでサッカーやってたからって大学進学にはプラスにならない。でもいい学校でまじめにサッカーやってれば、結構いい大学にも行けると思うんです。高校でプロがダメなら、大学でやってみて、もう一度プロを目指したいから」と、現実的な判断から高校サッカーを選択した者、一方で、ユース育ちで高校時代にJリーグデビューを果たし、「確かに高校サッカーっていう選択肢もあって悩みましたが、最終的に僕が思ったことは、自分が上手かったらどこでもできるんじゃないかってこと。高校生でも代表に入る選手は多いし、ユースは上手ければいつでも上にあがれる。要は自分次第だと思います」と述べる者…。

揺れ動く素直な少年たちの葛藤がリアルに描かれていて、写真の表現も素晴らしく、とにかく当時すごく衝撃でした。

◇バックナンバー
Sports Graphic Number 567号 若き日本代表の群像。 - 文藝春秋

ところで、今回初めてこの記事を書いた梅田さんという方を調べてみたのですが、著書を出しておられるんですね。読んだことがなかったのですが、今度機会があったら他の物も読んでみたいです。
梅田さんは、横浜マリノスに在籍したゴールキーパー吉原の軌跡を描いた「吉原慎也、きみを忘れないぞ!背番号「1」への途中で、「第八回ナンバー・スポーツノンフィクション新人賞受賞」を受賞されたフリーライター。ググってもあまり記事がひっかからないのですが、もっともっとこの方の文章がみたいなぁ。

 

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