逸話鳥尾小弥太

鳥尾小弥太と三浦梧楼2-山縣に嫌がらせをする編-

消えていた記事の上げなおしその2です。
2010年10月31日にアップした、鳥尾と三浦と山縣のめちゃめちゃ好きな逸話です。
奇兵隊のヤンチャ者にイタズラされる山縣。

本文

三浦観樹将軍の邸内巨石あり。幅間餘に亘り長さ丈許を過ぐ。只徒に門内に横たわるのみ、其何の用たるを知るものなし。石工某なるものあり、爼且橋に住す。會て語りて曰く、往時将軍の鳥尾将軍と共に番町に寓するや、山縣大将の邸も亦番町に在り、今の農相官邸即ち是なり。當時維新の大業漸く成りて、所謂御三家御三卿の邸宅も亦皆朝廷の有に歸し、尾州邸は陸軍の占むる所となりて今の所謂士官學校となるや、前庭の奇巖、後苑の珍石、皆沸拂下の名を以て陸軍将校の間に頒たる。含雪邸前の如き、之が為め一時荷車の轍を絶たず、官物私物の弊は、蓋し当時官場の常態なり。将軍常に之を慨し、一日、得庵将軍と共に千金を懐ろにして予に来りて曰く、予等庭園新たに成り、巨石を要す。其最も大なる物を選びて各々予等の邸に送るべし。但し石を運ぶの順路、必ず山縣の門前を過ぎらざる可らずと。當時、石工等私かに称して「面當て石」と云へり。今の三浦邸内のもの、即ち是れなるなからんやと。

古島一雄(鷲尾義直著 古一念会編) - p486(雲間寸観/大正三年一月一日)

 

雑感


嫌がらせするためだけに石に金使いすぎだろう。

個人的に、これぞ山縣と三浦と鳥尾の正しい関係…って感じの逸話です。
鳥尾と三浦に、谷干城、曽我祐準を加えて「四将軍」といったりしますが、こんな組み合わせもあるらしい。

當時華族の一團に七人組なるものあり。曰く浅野長勲、曰く谷干城、曰く鳥尾小弥太、曰く三浦梧樓、曰く井田譲、曰く楠田英世、曰く西村茂樹。實に反對軍の中堅たり。
既に黒田、大隈堅く執りて動かず、中止の形勢日に非ならんとするや直接上奏の議を決し、死を以て直訴せんことを誓ふ。

古島一雄(鷲尾義直著 古一念会編) - p352(雲間寸観/明治四十二年十一月一日)

今の政治家も数百年後にはこんなふうにちょっとかっこよく形容されたりするんでしょうね。

*ここから2020/12/01 追記*
明治42年11月1日の続きが切ないので一緒に記載します。

一日三浦観樹、直諫の機今や一日を緩うす可からざるを説く。衆議、機未だ熟せずとなし、将に散ぜんとす。西村茂樹私かに三浦の袖を引いて曰く、老躯今や世に益なし、一死以て君國に報ずるを得ば我事足る。願わくは卿に依りて死所を得んと、辭色頗る決す。三浦涙を飲んで別る。

西村茂樹(1828-1902)は、明治時代の思想家、教育者で、老中堀田正睦の元で貿易取調御用掛(外交上の機密文書を管理)に任ぜられていた人です。明治に入ってからは福沢諭吉らと明六社を起こし、その後貴族院議員になりました。
儒学を重んじていたこともあり、七人組の面々をみても保守派寄りの方だったんだろうなと思います。
三浦はこの西村さん好きだったんだろうな、と勝手に妄想しています。
(観樹将軍回顧録の条約改正の章で、西村さんが三浦に話しかけてくるシーンがあるのですが、その時の三浦が言っている西村さんの口調が、なんかすごく良い感じなので、リスペクトあったのではないかと思っている)
しかし、三浦の人から命やらなんやらを託される率が高すぎて一周回って「こいつこんなに背負って大丈夫か…」という気持ちになる…。
古島さん自身も、三浦のこと「困った爺さんだけど良い人だよ」(とても意訳)的な評価しているので、情に厚かったんだろうな三浦…。

で、この『古島一雄』と書かれた断片的なメモがノートに大量にあったのですが、本当にこの本か不安だったのでここ数日探して取り寄せてみたのですが、合っていました…。
ノートは大学時代に作ったものなので(お金なかったのでひたすら図書館で写経していた)、時期的にたぶん三浦に興味があって手当たり次第にメモしていた頃かなぁと思うのですが、懐かしいです。
古島一雄(1865-1952)は、明治~昭和初期を生きたジャーナリストで、玄洋社→立憲改進党所属のコースをたどった、何となく思想が分かる感じの人です。
彼の残した回顧録はいくつかあり、第29第総理大臣を務めた犬養の側近であったことから、だいたいは犬養絡みの話が多いのですが、先ほどのコースもあって三浦の登場率がめちゃめちゃ高いのです。

有名な三党首会談に関するエピソードは、電子書籍版の回顧録にも収録されていますが、この古一念会編版は回顧録には載っていない、『日本乃日本人』に掲載されていた「雲間寸観」が載っていまして、これが面白くて面白くて…。(今でいう新聞の社説みたいなやつかなと)
三浦については、息子の嫁取り話が死ぬほど面白いので近いうちにアップしたいと思います。
というか古島さんは本人と面識あるのによくこんな書き方で残そうと思ったな(褒めている)

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